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2010年09月06日

#tsuneoka 常岡浩介さん誘拐犯をタリバンと報じた新聞社サイトについての検証

 アフガン取材中に誘拐されていたフリー・ジャーナリスト常岡浩介さん( @shamilsh )が、約5ヶ月ぶりに解放され、本日まもなく帰国する件に関してツイッター上では、これまで日本の大手新聞テレビ各社が、常岡さんは"タリバンに誘拐された"と報道してきたことについての賛否が議論されています( #tsuneoka )。
 
 これは、解放後(日本時間:9月6日午前3時頃)、常岡さん自身がTwitter上で、誘拐犯はタリバンではなく現地の腐敗した軍閥集団であることをツイートしたことがキッカケと思われます。
 
 
 私自身は、新聞やテレビが、海外を含むあらゆる事件・事柄について、必ずしも記者を派遣して直接取材すべしとは思っていません(おそらく、この件に関しては、ほとんどの方がそういう考えではないかと思います)。常岡さんの様に海外に出かけて独自に取材を行なうフリー・ジャーナリストや、海外のメディア・通信社の情報を引用しても構わないと思っています。当局による発表の引用でも構いません。
 
 
 では問題はどの辺にあるのか、少し調べてみることにしました。そこで、常岡さん誘拐に関する記事を、MSN産経ニュースから拾って時系列に並べたのが以下です。ご存知の通り、新聞社サイトの記事は、企業サイトや個人のブログ等と違ってアーカイブが基本ではありません。いつ削除されるかわからないため、ウェブ魚拓というサービスを利用しました。
 
 なお産経新聞の記事のほかに、「犯人はタリバンではない」とする常岡さんご自身のツイートと、江川紹子さんが作成したtogetterをリンクします。
 
  常岡浩介: いくつかのメディアで、「タリバンが誘拐」と、出ている ...
 
  ・Togetter - 「解放された常岡さんが犯人像を語る」

 
産経新聞の記事(MSN産経ニュースより)
 
記事1
 配信日時: 2010年6月17日 12時40分
 タイトル: 常岡さんはタリバンが監禁、身代金を要求 アフガン当局
 特筆すべき個所(私観):
   反政府武装勢力タリバンがアフガン政府に対し、身代金を要求していることが17日、アフガン治安当局者の話で分かった
 
 
記事2
 配信日時: 2010年9月4日 0時44分
 タイトル: 常岡さんサイトに書き込み 「まだ生きている」
 特筆すべき個所(私観):
   反政府武装勢力タリバンに監禁されているとみられるジャーナリスト常岡浩介さん
 
 
記事3
 配信日時: 2010年9月5日 21時02分 もりた注:誤りを訂正しました 2010年6月17日→2010年9月5日)
 タイトル: タリバンが常岡さんの拉致認める 地元司令官
 特筆すべき個所(私観):
   反政府武装勢力タリバン地元司令官は5日、首都カブールの日本大使館で保護されたフリージャーナリスト常岡浩介さん(41)をタリバンが拉致したと認めた。アフガン・イスラム通信が伝えた。
 
 
記事4
 配信日時: 2010年9月6日 7時19分
 タイトル: 解放の常岡さん、きょう帰国 ツイッターに「犯人タリバンじゃない」
 特筆すべき個所(私観):
   アフガニスタンで反政府武装勢力に拉致、監禁され、4日解放されたフリージャーナリストの常岡浩介さん(41)は
 
 
記事5
 配信日時: 2010年9月6日 7時59分
 タイトル: タリバン誘拐 常岡さん解放 5カ月ぶり 健康、「感謝したい」
 特筆すべき個所(私観):
   【ニューデリー=田北真樹子】アフガニスタンで取材中にイスラム原理主義勢力タリバンに誘拐されていたフリージャーナリスト、常岡浩介さん(41)が約5カ月ぶりに解放され、カブールの日本大使館に保護された。5日、日本政府関係者などが明らかにした。4日夜(日本時間5日未明)に保護された。
 
 
 
 以上、MSN産経ニュースに掲載された5つの記事からわかること、「おやっ」と思うことをいくつか並べてみたいと思います。もちろんここに紹介した5つの記事のみで、問題を一般化は出来ると思っていませんので、あくまで限られた情報からわかることとして述べてみたいと思います。
 
 
指摘1
 
 先ず、6月17日のニュース(記事1)によって、アフガン政府(治安当局)の発表に拠って新聞(少なくともMSN産経ニュースサイト)は、"タリバンに誘拐された常岡さん"という書き方をする様になったことが、推察されます。
 
 確かに、毎度毎度、"アフガン政府がタリバンに誘拐されたと断定している(発表した)常岡浩介さん"という枕詞を付けて書くのは面倒であり、読者も読みずらいだろうとは思います。しかし、政府当局の情報が根拠であることを明かした初めての記事である、6月17日のこの記事だけは、もっと明確な表現を使うべきであると考えます。
 
 つまり
  反政府武装勢力タリバンがアフガン政府に対し、身代金を要求していることが17日、アフガン治安当局者の話で分かった
ではなく、
  反政府武装勢力タリバンがアフガン政府に対し、身代金を要求していると、17日、アフガン治安当局者発表した
と。
 
 何だ言葉の表現が少しだけ違うだけじゃないかとおっしゃる人がいるかもしれません。基本的には、記事中にあった「分かった」という文言を、「発表した」に変えただけです(いわゆる「分かった」問題は、フリージャーナリスト上杉隆さんが、その著書「ジャーナリズム崩壊」の中で述べていらっしゃいます。ご存じない方は、お読みいただくことをお勧めします)。
 
 「分かった」という表現一つで、これ(身代金を要求してきたのがタリバンであるということ)が事実であると断定する読者は、少ないとは思います。アフガン当局者の話(の引用)であることも書いてあります。しかし、この日の記事を読み損なって、常岡さんの誘拐事件を翌日以降の記事のみで目にする人は、"タリバンに誘拐された常岡さん"と書く根拠が、アフガン当局の発表であることを知りません。
 
 せめて、政府発表を引用した最初の記事であるこの日のニュースだけでも、これが当局発表に基づく引用であることを、もっと明確に表現すべきであると考えるものです。
 
 
 気付いた点、指摘したい点は、未だいくつかありますが、長くなりましたのでここで一旦切ります。続きは、気が向いたら掲載したいと思います。
 
 
最後にひと言。
 
 よく、「政治家が発言する時は、一言一句まで気をつけなければならない。政治家は言葉で仕事している」ということを、テレビに出る政治評論家や新聞の社説、投書欄などで見かけます。私は、ジャーナリストにとって一言一句の言葉遣いは、政治家以上に重要であると思っています。彼ら(ジャーナリスト)こそ、政治家以上に言葉に依存する部分が大きい職業ではないかと思います(ここでは、"ジャーナリスト"には、新聞社、テレビ局の記者も、一応含めておきます)。
 
 
--- 関連情報 ---
(1) 久々に得た新たな視点-上杉隆著「ジャーナリズム崩壊」 2008年08月08日 IT屋もりたの今時パソコン日記

投稿者 もりた : 2010年09月06日 18:19 このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

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