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2010年05月18日

「介護福祉士試験 もっと平易な日本語に」遠藤織枝先生の提言

 今日、2010年5月18日(火)の朝日新聞のオピニオン面(13面)に、日本語教育学者・遠藤織枝先生の投稿が掲載されています。遠藤先生からは、越谷市内にある文教大学のオープンユニバーシティにおいて、この冬(12月から1月にかけて)3回にわたり「日本語教育の世界」という講義を受けました。
 
 「国語教育」と「日本語教育」の違いから始まって、日本語教育の歴史、日本語を学ぶ人たち(どんな人たちが、どんな所で日本語を学んでいるのか)、日本語を教えるということについて、具体例を挙げて詳しく教えていただきました。つい4ヶ月前のことですので、新聞に掲載された遠藤先生のお名前を発見してすぐに、先生の投稿記事を読ませていただきました。
 
 
 先生は冒頭、この春の看護師国家試験で、EPA(経済連携協定)に基づき来日したインドネシアとフィリピンの看護師候補者の中から、初めて3人の合格者が出たことを紹介されています。しかし、合格率はわずか1%であり、日本人を含む全体の合格率90%に比べて極端に低いことについて、日本語の壁が如何に厚いかを改めて示す結果になった、と述べています。
 
 そして、この結果を目の当たりにした介護福祉士候補者らの不安と混乱、受け入れ施設の当惑といら立ちは限界に達している、とおっしゃっています。
 
 
 候補者の在留が許される期間は、看護師が3年、介護福祉士が4年と定められています。その間に(看護師、介護福祉士それぞれの)国家試験に合格して資格を取得出来なければ、帰国しなければなりません。看護師の国家試験は年1回ありますから、看護師候補者には3回のチャンスがありますが、介護福祉士国家試験の受験資格には3年の実務経験が必要とありますので、来日した介護福祉士候補者の場合は、1回しかチャンスがありません。
 
参考:
 
  厚生労働省「日比経済連携協定に基づく看護師・介護福祉士候補者の受入れ関係(平成18年9月9日協定署名)」
 
  介護福祉士国家試験の受験資格((財)社会福祉振興・試験センター)

 
 遠藤先生は、この後、受け入れ施設が彼らを何とか合格させようと必死にサポートしている(日本語指導の担当職員の配置、勤務時間内に日本語学習時間を設ける)ことや、日本語教育学会でも、現場の日本語教育を効果的に進める方策を考えていることを紹介していらっしゃいます。しかし、"現在の試験問題の日本語は難しすぎ、本人たちの必死の努力だけではどうにもならない。試験問題の見直しが急務だ。"と述べていらっしゃいます。
 
 そして、続けて、"問題のレベルを下げて内容をやさしくするのではない。レベルは維持しながら、その知識を測るための日本語を平易にすることはできる。"とおっしゃっています。
 
 
 具体例として、過去2回の試験問題を用いて、問題点を指摘されていらっしゃいます。詳しくは新聞紙面をお読みいただきたいと思いますが、先生が挙げた文例を紹介させていただくと、
 
 問題点1.最大の問題点は漢字。振り仮名を付けるだけで、非漢字圏の受験者の負担は格段に減る。
 
 問題点2.文章が難解。
   「~が進行した場合、体動困難が生じるので、褥瘡(じゅくそう)の予防のために体位変換を行なう」
 
 問題点3.問題文の中の用語が不統一。
 
   「介護計画」と「ケアプラン」(が問題文の中に混在)
   「過剰摂取」と「摂りすぎ」(が問題文の中に混在)
 
 問題点4.漢字の用語が長い
 
   「認知症対応型共同生活介護事務所」
   「全国健康保険協会管掌健康保険」
   これらを短時間に読み解くのは至難の業である。
 
 問題点5.用語が難しい。
 
   「漏給」
   「殿部」は辞書にない。
 
 
といった具合です。私自身、「漏給」は読めませんし、意味もわかりません。また、「殿部(とのべ)」をInfoseekマルチ辞書で引くと"律令制で、主殿寮(とのもりよう)に属し、宮中の掃除灯火の設営などを行なった下級官人。"とあります。おしりを表す「でんぶ」は「臀部」と表記するのが本来の様です。先生の投稿を読むまで、「殿部」と「臀部」の表記の違いに気付きませんでした!これでは、海外から来た人は、判らないでしょうね。
 
 
 先生は、
 
"専門職を目指す以上、専門用語は必要だろうが、もう少し分りやすくなるはずだ。
 候補者たちは現場では評判がいい。つたない日本語を明るい笑顔で補い、利用者とのコミュニケーションを図っている。介護現場を明るくし、利用者を喜ばせている。
 試験の日本語を平易にすることは、単に外国人候補者のためだけではない。裁判所・病院・自治体などの難解な日本語の見直しと同様、日本語全体の課題でもある。介護の専門用語も、介護施設の利用者や周囲の人々、そして外国人候補者らにとって、分りやすい言葉であってほしい。
"
 
と結んでいらっしゃいます。上記の最後の文章(下線を引いた部分)が、私には特に目を見開かされました。看護師、介護福祉士国家試験における日本語のカベの問題は、海外から来た候補者だけの問題ではないこと、看護や介護を受ける日本のお年寄りなど、むしろ日本人の問題であることを気付かせていただきました。
 
 先生が指摘されていらっしゃる様に、裁判所・病院・自治体などの難解な日本語は、カベとなって、専門家(法曹関係者、医師、公務員)と利用者(原告・被告・傍聴人となって裁判に直接・間接的に関わる私たち、患者、住民)の間に立ちはだかっています。これは単に日本語と言う言葉の問題ではなく、専門用語を分りやすい言葉でといった、専門家から非専門家へのアプローチを如何に促すかということであると思います。
 
 「難しいことほど、簡単に」説明することの重要性、いまなお様々な分野に残っている弊害を取り除くキーワードではないかと、以前から思っています。
 
 
 今年度も、遠藤織枝先生の講義は、文教大学オープンユニバーシティ「生涯学習コース 秋期」にあります。受講したいと思っています。
 
 
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投稿者 もりた : 2010年05月18日 20:56 このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

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コメント

介護福祉士国家試験・・・・ 懐かしい響きです!
また今年も来るんですねー!
http://www.cg1.org/parts8/

上記のようにカウントダウンしていると早く過ぎますよね!

投稿者 大阪の会社設立屋 : 2010年11月03日 11:54

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