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2010年01月14日

小沢氏の政治資金に関する新聞・テレビの報道に感じる異常性(2)報道は推定無罪の原則を忘れているのか

 先ほど放送されたNHKニュース9によると、本日(1月13日)、北海道にある石川知裕・衆議院議員の事務所や小沢一郎・民主党幹事長の個人事務所などを、検察が一斉捜索したとのことです。先日、石川議員が1回目の事情聴取を検察から受けた際に認めたとされる内容(2004年の支出を、2005年の支出として政治資金報告書に記載した)を裏付けるための捜索ということです。
 
 
 私は、小沢氏の政治資金に関する新聞・テレビの報道には、ある種の異常さを感じると書きましたが、その続きを述べたいと思います。先日は、この件を連日報道している新聞やテレビには、違法性の所在を明らかにしている記事(ニュース)がほとんど無いことを指摘しました。毎日、この件に関する新たな記事やニュースが私たちの目や耳を通して脳にインプットされるのですが、どうして、そのこと(それぞれの記事が伝えている事柄)が法律違反に結びつくのかという解説がほとんどありません。詳しくは、前回のエントリーを参照ください。
 
  ・小沢氏の政治資金に関する新聞・テレビの報道に感じる異常性(1)報道は違法性の所在を明らかにしていない(IT屋もりたの今時パソコン日記)
 
 
 今回は、小沢氏の件に関する新聞・テレビの報道、あるいは報道姿勢に対する指摘の2点目として、「新聞・テレビの報道は、推定無罪の原則を軽視している」ことについて述べたいと思います。なお、前回のエントリーで、新聞・テレビの報道・報道姿勢について指摘したいことは全部で4点ある、と書きましたが6件に増えました。今後さらに増える可能性もありますが、とりあえず話を進めます。
 
 
 この2ヶ月来、新聞やテレビは連日のように小沢一郎・民主党幹事長の政治資金団体「陸山会」による土地購入の際の支出を、政治資金報告書へ虚偽に記載(本来、支出の行なわれた2004年の政治資金報告書に記載されるべきところ、2005年の報告書に記載されている)した疑いで検察が捜査している件を報道しています。
 
 その(報道)内容は、誰それに対して、いつ事情聴取が行なわれる・行なわれたかや、どういうことを聞いて、どういう答え(供述)がされたかといった、およそ直接、事情聴取を行なった検察官しか知り得ないような情報がほとんどです。また、紙袋に入れた4億円を台車に載せて運んだという極端に詳しい情報も報道されましたが、そのことが政治資金規正法違反とどのように関係するのかということは、記事やニュースの中では説明されません。
 
 秘書の寮を建設するために土地を購入すること、購入代金を支払うために現金を運ぶこと自体だけを取り上げた記事やニュースの内容は、正直なところ私の頭の中では、それだけでは違法とは結びつきません。捜査に当たっている検察は、何故・どのような点で法に触れると見ているのかという解説が記事(ニュース)の中から抜け落ちていると感じています。
 
 
 にもかかわらず、連日連夜、活字と映像で、「紙袋で4億」・「小沢先生から指示」といった見出しや、4億円の札束のイメージ映像・購入した世田谷区深沢の土地のヘリコプターから撮影したと思われる上空からの映像を見せ続けれれれば、よほど先入観を排除するよう自らに戒めている人でも、"疑い"がいつの間にか"事実"と変わってしまうのではないでしょうか。ましてや、メディアの影響を深く自覚していない多くの視聴者は、そこに犯罪があったと何の疑いの念も持たずに解釈してしまうのではないかと思います。
 
 私はこのことを非常に恐れています。それは何故かというと、申し上げるまでもありませんが、(間接)民主主義の基本は選挙であり、私たち一人一人の投票行動が政権の担い手を決定するからです。そして私たちの投票行動を左右する最も大きな要因が、新聞やテレビ、雑誌、インターネット等による政治報道だからです。もちろん、街頭演説などで候補者から直接話を聴いて、自らの政権選択の判断材料とする場合もあるかもしれません。しかし、インターネット選挙やマニフェストの発行部数に制限のある現在の公職選挙法では、特に国政選挙の場合は、そのような機会はほとんど無いというのが現実ではないかと思います。

 
 以上の様に、主権者である私たちの投票行動に大きな影響を与える政治報道にも関わらず、"疑い"の段階で連日連夜、報道が繰り返され、いつの間にか"事実"である("事実"かもしれない)と勘違いする人々が増えることは、民主主義にとって非常に危険であると思うのです。
 
 これでは、もし検察に疑われて捜査が開始されたら、"疑い"が疑いではなく、"事実"ということになってしまいます。何故なら、今回の「陸山会」の件や、鳩山首相の政治資金の件のように、検察が捜査を開始すると、新聞・テレビによって連日連夜の報道が繰り返され、決して少なくない視聴者や購読者の頭の中に"事実"という印象が植え付けられてしまうからです。
 
 
 このようなことを防ぐために、新聞やテレビなど報道機関、特に政治報道を担うメディアは、当事者の一方からのみ話を聴くのではなく、他方からもよく取材して報道することが求められると思います。専門ではないのでよくわかりませんが、報道機関、あるいはジャーナリズムの基本ではないのでしょうか?このことについては、後に別のエントリーでお話したいと思います。
 
 
 再び確認になりますが、今回の小沢氏の政治資金団体「陸山会」の土地取引に関する政治資金規正法違反容疑の件は、文字通り"容疑"の段階であり、ある団体からの告発により検察が捜査を始めた段階です。申し上げるまでも無いと思いますが、この国においては、ある人間、または、ある組織による行為が法律に違反しているか否かの判断と、有罪と判断された場合の刑罰内容(量刑)の決定は司法、つまり裁判所においてのみ行なわれると理解しています(中学校レベルの知識しか持ち合わせておりませんので、誤っていれば悪しからず)。
 
 今回の件に置き換えれば、
 
  現在検察が行なっている捜査が終了した後、
 
  検察が裁判所に訴える(起訴する)か否かを判断する
 
  (検察が裁判所に対し、容疑者を起訴した場合)
  裁判所による裁判が行なわれる (最大3回(3審)まであり得る)
 
  有罪(執行猶予の有無含む)・無罪、および量刑の確定
 
  刑の執行
 
という手順を踏むもの(これまた中学校の社会科レベルの知識しか持ち合わせておりませんが)と理解しています。
 
 
 今回の件についての新聞、テレビの報道に、連日のように接する度に、「推定無罪」という原則を、報道に携わる方々が軽視していると思い知らされます。松本サリン事件における河野義行氏のことを、新聞社やテレビ局において報道に従事している方々は、もう忘れ去ってしまったのでしょうか?河野さんの場合は、当然ですが起訴に至りませんでした。それは警察の"慎重さ"によるところも多少はあるのでしょうが、翌年に起きた地下鉄サリン事件によってオウム真理教による犯行であろうことが、警察や報道機関を含む多くの者の目にさらされたことの方が、より大きな要因だったのではないかと見ています。
 
 仮に今後、小沢氏の秘書や元秘書、あるいは小沢一郎氏自身が起訴されるに至ったとしても、依然として"疑い"の段階であることを、新聞・テレビだけでなく、私たちも忘れてはならないと思います。これは、今回の"疑い"の対象(小沢氏とその政治資金団体の職員・元職員)が政治家だから、政権を担う立場にある政治家だから、前政権(自民党)とは対立軸にある民主党の幹事長だからということで片付けてはいけない、非常に重要なことだと思っています。
 
 例えば今回の件のように、疑われた人が政治家ではなく普通の人、また疑われた行動や事柄も、酒に酔って夜中に大声を出して警察に通報されたというような内容であったとしても、同様ではないかと思います。もし、それが人違いで、疑われた本人はまったく無関係だったとしたら、どうでしょうか。警察所で取調官に何度弁明しても理解してくれない、そのうち噂が広まって近所から"疑い"の目で(まるで"事実"であるかのように)見られるようになってしまった。
 
 そのようなことになったら、何日も続く取調べに絶えられるでしょうか。比喩が大袈裟とお思いの方もいらっしゃるかも知れませんが、電車内での痴漢等でもあったように、冤罪のケースは、決して少なくないのではないでしょうか。そのような立場、例えば昨年3月3日に任意の事情聴取の初日に突然逮捕され、80日以上にわたって拘留された小沢氏の公設第1秘書・大久保隆規氏のように、追い込まれたら私にはとても耐えられないのではないかと思います(大久保氏の場合は、拘留期間も裁判の行なわれている現在も、一貫して無罪を主張されています)。嘘の自白をしかねないかも知れず、その恐ろしさは想像だに出来ません。
 
 
 ましてや、まったく無関係(無実)にも関わらず幼女殺害の犯人として、逮捕・起訴され、裁判を経て有罪判決(無期懲役)を受け、17年間も刑に服した足利事件の被告人とされた人の例を持ち出すまでもありません。裁判でさえも100%ではないということを、私たちはつい数ヶ月前に知ったばかりです。捜査も取り調べも、裁判も、全部、人間が行なうことです。0.0001%でも"事実"と言い切れない可能性があれば、あくまで"疑い"と見なすべきということを、一人の人生の18年間という犠牲を伴って、あらためて学んだのです。
 
 
 私たちは、いったい何人の人生を犠牲にすれば、気がつくことが出来るのでしょうか?
 
 
--- 関連情報 ---
(1) 「推定無罪」 2010年01月11日 IT屋もりたの今時パソコン日記
(2) 小沢氏の政治資金に関する新聞・テレビの報道に感じる異常性(1)報道は違法性の所在を明らかにしていない 2010年01月12日 IT屋もりたの今時パソコン日記

投稿者 もりた : 2010年01月14日 00:08 このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

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コメント

小沢氏の疑惑が出る度に、秘書や献金した企業の人間が自殺や事故死するのはどういうことでしょうか?
こんな事自体が見過ごされてきたことこそ、異常に感じます。

投稿者 gen : 2010年01月14日 00:19

 genさん、コメントありがとうございます。

> 小沢氏の疑惑が出る度に、秘書や献金した企業の人間が自殺や事故死するのはどういうことでしょうか?
> こんな事自体が見過ごされてきたことこそ、異常に感じます。

 申し訳ありありませんが、そういう事実を知りません。また、そういう報道にふれたこともありません。あまりたくさんの新聞やテレビ、週刊誌、ネットニュースなどを見ないほうです。
 
 もし、そういう報道を目にしたら、先ずそのことが誰によって(ルートを通って)伝えられている情報であるかを、考えたいと思っています。報道関係以外の者には(どのような経路を通って伝えられた情報であるか知ることには)限界があるので、単なる想像になってしまいますが。
 
 それから、そのような情報が報道機関に伝えられたら(小沢氏に限らず政治家全般にわたって)、報道機関は努力して(検察官に取材?するといった又聞きではなく、出来るだけ報道機関自らの手で取材して)調査して、報道すべきと思います。報道機関は、そういう所に力を注ぐべきと思います。
 
 
 念のために1つ申し添えますと、私はこの記事で小沢氏、および「陸山会」の行為が適法であるとか違法であると言うつもりは無く、そのことを知る術も持ちません。1つ前のエントリーにも書きましたが、この件に関する新聞やテレビの報道そのものや報道姿勢についての批判を述べているということを理解していただければと思います。
 
 というのは、これも今回のエントリーに書きましたが、今回のようなケース(新聞、テレビの報道や報道姿勢)が自民党の政治家に起きても、一般市民の身の上に起きても、誰の身の上に起きても、それが誤解(完全に適法ではなく、部分的に違法だったとしても)だった場合に、その人の人生を台無しにしてしまうからです。
 
 ましてや政治家に関する場合は、当事者のみならず、私たち国民にも、(私の指摘する新聞、テレビの報道の異常性が)大きな影響を与えるのではないかと懸念するからです。

投稿者 もりた : 2010年01月14日 00:59

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と死屍累々であり、真っ黒で報道の正当性を言ってる場合じゃないですよ。
むしろ、なぜこれらの事件が報道で隠されているのかを考えるべきです。

投稿者 gen : 2010年01月14日 22:07

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