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2008年10月18日

消えた年金(19)-社保事務所、年金改ざんの発覚恐れレセプト抜き取り常態化、毎日新聞が報道

 「消えた年金」シリーズ、順番からいえば、標準報酬月額改ざん(の3条件を満たし、改ざん)された疑いの極めて濃い受給者約2万人への戸別訪問開始(16日)の件を、先に書く予定でした。その前に今日また大きなニュースが伝わってきてしまったため、標題の件を先に書きます。
 
 今朝(10月18日)の毎日新聞1面トップ記事の見出しは、「レセプト抜き隠ぺい」-「年金改ざんで社保事務所、無資格者に医療費 職員ら証言」です。社会面にも補足記事が載っています(「レセプト抜き取り 組織ぐるみで不正、社保事務所職員ら証言『所長も情報共有』」)。
 
 毎日新聞のWebサイト(毎日.jp)に記事全文が掲載されています(当然ですが、文章は紙面とまったく同じです。知らなかった、記事の全文が掲載されているとは!)。
 
(1面トップ)
  ・年金改ざん:レセプト抜き隠ぺい 無資格者に医療費 - 毎日jp(毎日新聞)
 
(社会面)
  ・年金改ざん:組織ぐるみで不正 レセプト抜き取り - 毎日jp(毎日新聞)

 
 
 厚生年金の標準報酬月額が改ざんされた問題、いわゆる「消された年金」問題に関して、10月3日に社会保険庁が発表した「改ざんされた可能性がある記録が延べ143万件にのぼる」については、これを報じた毎日新聞も次の問題を指摘していました。
 
オンライン化した1986年以前の記録や、3条件の枠外の記録にも改ざんが混じっていると見られる。さかのぼって年金から脱退し、その間の標準報酬月額をゼロにする遡及(そきゅう)脱退のケースも含まれていない。改ざんはさらに増幅するとみられ、社保庁の認識の甘さは明らかだ。(2008年10月4日 毎日新聞)
 
 その通りのことが、今回顕在化したことになります。社会保険事務所の職員や元職員の証言により、「遡及(そきゅう)脱退」による厚生年金記録改ざん隠ぺいの実態が、明らかになってきました。毎日新聞記事の言葉を借りれば、“年金保険制度のみならず、医療保険制度もゆがめてきた実態が明らかになった。”ということかと思います。

 
● レセプト抜き取りによる年金改ざん隠しの構図(10月18日 毎日新聞 1面トップ記事を基に記述
 
 ほとんど毎日新聞の記事をなぞるだけですが、このニュースをあらためて説明したいと思います。厚生年金の支給額算出の基礎となる標準報酬月額を改ざんされた可能性のある記録がのべ144万件にのぼります(あくまで10月3日時点における社保庁の発表)。しかし、その144万件の中には、過去にさかのぼって厚生年金を脱退させ、その間の標準報酬月額をゼロにする不正な「遡及(そきゅう)脱退」のケースは含まれていません。
 
 今日のニュースで、社会保険事務所の職員、および元職員の証言として明らかにされたのは、脱退した企業の社員が病院(医療機関)を受診した場合のケースです。社員はすでに健康保険の資格を失っています(無資格状態)ので、医療費を10割全額負担しなければなりません。
 
  レセプト抜き取りによる年金改ざん隠しの構図(2008年10月18日 毎日新聞1面より)
レセプト抜き取りによる年金改ざん隠しの構図(10月18日 毎日新聞1面より)

 
 問題のケースの多くでは、企業側は厚生年金と健康保険(注1)から脱退したことを社員本人には知らせていなかったとのこと。社員は自分が無資格であることを知りませんから、医療費の3割のみ病院に支払い、病院(注2)はレセプト(診療報酬明細書)を社会保険事務所に送ります。
(注1) 社員が厚生年金に加入する時は、同時に政府管掌健康保険(私がサラリーマンだった頃は“社会保険”という呼称だったと思う。要するに健康保険です)に加入します。同様にして厚生年金から脱退する時は、同時に健康保険からも脱退します。
(注2) 今回、問題となっているケースでは、社員だけでなく、病院など医療機関もその社員が無資格者であることを知りません。
 
 病院(医療機関)からレセプトを受け取った社会保険事務所では、社会保険診療報酬支払基金の1次審査を行い、受診した社員が無資格者であることから、本来ならば、病院に対して医療費(診療報酬)の返還請求を行い、社員が全額負担しなければならないそうです。しかし、実際には返還請求を行わなかったといいます。何故か、不正(遡及脱退)の発覚を恐れたからだと、毎日新聞は書いています。私もそう思います。
 
 さらに、病院から送られたレセプトには保険で受診したことの記録が残るため、該当するレセプトを抜き取って別管理にしていた、こういうことが複数の社会保険事務所の職員、元職員の証言から明るみになってきたとのことです。
 
 
● 社会保険事務所の職員、元職員の証言(10月18日 毎日新聞 社会面の記事を基に記述
 
 社会保険事務所の職員、元職員の証言によると、別管理にしたレセプトは「滞納処分票」に挟まれ、“遡及処理して滞納保険料の圧縮が行われると、徴収課の係長や課長、所長が処分票に押印して決済した。元職員は「課員も所長もそれで情報を共有した」と話し、職員個人の不正ではなく、事務所ぐるみの隠ぺいと強調する。
 続けて“さらに、会社が年金の適用事業所から脱退する際、従業員から回収する保険証をあえて回収しないケースもあったという。
 
 
● 社会保険庁だけでなく、改ざんに関与した企業経営者の責任も追及されるべきである
 
 今回の「遡及脱退」による年金改ざんの隠ぺいも含め、厚生年金の標準報酬月額の改ざん問題について、私のブログでは社会保険庁だけを責めているように読者のみなさんの目には映るかもしれません。しかし、おきらくさんの記事(誤認識でした・・・消された年金問題)を読んで気付かされたのですが、社保庁とともに企業側も責められるべきであると思います。
 上記の図の中で、会社から社会保険庁へ向う点線の“保険料を納付せず”というコメントのことです。一方、会社と社員をつなぐ線のコメントには“保険料を折半”とあります。つまり、おきらくさんが指摘されているように、企業は社員からは保険料(と称して給料から)天引きし、社会保険庁に保険料を納付していなかった(社会保険庁は承知の上)ということです。そのお金はどこへ行ってしまったのでしょうか?標準報酬月額の改ざんに関与した企業の経営者は、社員、元社員に説明するべきです!
 
 2万人の受給者宅へ戸別訪問をしても、事情を全く知らされていない社員が一所懸命協力しても、厚生年金記録改ざん問題の全面解決は遅々として進まないのではないかと思います。社会保事務所の職員、元職員の証言だけでなく、関与した企業経営者の自主的な証言が必要なことは、私でもわかります。叱らないから証言して、と政府から呼びかけたほうがいいかも知れません(本当に)。
 
 
● 証言した社会保険事務所の職員、元職員のみなさんに拍手を贈りたい
 
 この「消えた年金」シリーズの初期の頃のエントリーでは、隠された問題を明らかにするために、社会保険庁 元・職員の方々の証言を期待した記述をしました。
 
他人から暴露されてからオープンにするのではなく、自ら白日の下に晒して欲しい、特にすでに退職された元・社保庁職員の方々の人間性に期待します。
 
 今読み返せば、少し失礼な表現が含まれていたように感じます。お詫び申し上げます。但し、今回、証言をしてくださった職員、元職員の方々に対するお詫びです。今回の勇気ある証言は、正直予想外であり、まだまだ捨てたものじゃないと嬉しくなりました。
 
 
● この問題について、いち早く言及しているブロガー
 
 以上の毎日新聞のニュースに関しては、先日も参照させていただいたあおきんさんがいち早く投稿されていらっしゃいます(今朝6時台-早い!)
 
  年金記録改ざんにより関連することが出てくる、出てくる!(あおきんの食事、徒然、テニスの日記)
 
 
● これは毎日のスクープか?
 
 このニュースが毎日新聞のスクープ(その可能性自体を気付いたのは、あおきんさんの記事のお陰です)だったのか否かは知らないのですが、他紙も追随しているようです(それとも独自の取材?)。
 
  健保偽装脱退も関与 社保職員証言 レセプト隠蔽工作(asahi.com:朝日新聞)
 
 今後とも、毎日新聞さんには頑張って欲しいと思います。もちろん、他紙さんにもです。
 
 
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投稿者 もりた : 2008年10月18日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

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コメント

私の場合、10か月にわたり改ざんされていました。事業主ですが、本人には全く知らされていませんでした。実情を知りたいと調査しましたが、年金機構(社会保険事務所)は当時の書類が一切残っていないので改ざんされた後の記録しか残っていないと言うばかりです。会社の賃金台張、個人の給与明細書との相違があることから、やっとのことで改ざんがなされていることは認定したが事業主の分は、訴求訂正は出来ないと、申し立てを拒絶されました。本人が知らないうちに記録の改ざんがなされるという事態は全く理解できません。本人が承知しているはずという仮定を押しつけるばかりで取り付く島が無いのが実情です。その仮定が正しいという証拠を示すことも有りません。組織的に改ざんの事実をかくし、防御しているとしか考えられません。こんな不合理な話を摘発する方法はないのでしょうか。

投稿者 福田福光 : 2011年06月01日 16:56

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