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2007年08月19日

新藤兼人傑作選を見る

 新藤兼人傑作選を東京・渋谷のシネマヴェーラ渋谷ユーロスペースと同じビルの4階)で見ました。結果的に8月15日から17日まで、3日連続で渋谷に通ったことになります。
 
  新藤兼人監督「陸(おか)に上がった軍艦」(IT屋もりたの今時パソコン日記)
  ・河瀬直美監督「殯の森(もがりのもり)」(2)(IT屋もりたの今時パソコン日記)

 
 新藤兼人監督作品のうち24作品を連日上映していたようですが、残念ながら17日(金)で終了でした。最終日になんとか3作品だけ見ることが出来ました。
 
 下左はシネマヴェーラ渋谷によるパンフレット、右は「新藤兼人全監督作品カタログ」で1冊購入しました。
東京・シネマヴェーラ渋谷にて2007年8月4日から17日まで上映された新藤兼人傑作選のパンフレット新藤兼人全監督作品カタログ

 
● 縮図(1953年)
 
 佃島の貧しい靴屋の娘・銀子が芸者置屋に売られていく話です。「これは、人身売買が公然と行なわれていた頃の話である」という説明が冒頭に表示されますが、この映画が撮影された時期からすれば過去の出来事の作品化ではなく、戦後間もない当時の現実だったように思います。
 
 出演は、主演・銀子役に乙羽信子、銀子の父・銀蔵役 宇野重吉など。
 
 朝鮮特需の世相も少し出てきます。キンキン塾公演「昭和26年・下宿神田屋」と同じ時代の話です。
 
  サプライズ2 三越劇場「昭和26年・下宿神田屋」(IT屋もりたの今時パソコン日記)
 
 
● 三文役者(2000年)
 
 新藤監督作品の常連、映画俳優の殿山泰司さんの半生を描いた作品です。「どーも、どーも」が口癖の殿山さんは、みんなに「タイちゃん」と呼ばれ親しまれていたそうです。
 
 出演は、主人公・タイちゃん(殿山泰司)役に竹中直人、内縁の妻・キミエ役 荻野目慶子、正妻・アサ子役 吉田日出子。
 
 「裸の島」、「人間」など過去の映画の殿山さん自身の出演シーンが随所に使われています。また、殿山さんとともに新藤監督作品の常連であった女優の乙羽信子さんが、殿山さんとの思い出を語るオカジ(乙羽信子)本人の役として出演されています。これは、乙羽さん(1994年没)が生前に撮っておいたシーンをうまく使用して、出演しているように見せているのだそうです。(「新藤兼人全監督作品カタログ」より

 
● 原爆の子(1952年)
 
 広島を舞台にした映画です。小学校の教師が原爆投下から6年後に、幼稚園時代の教え子を尋ねて、原爆の後遺症に悩む人々の姿を目にするというストーリーです。
 
 出演は、小学校の教師・石川孝子役に乙羽信子、孝子の父母(原爆で死亡)に仕えていた岩吉役に滝沢修、岩吉の隣人・おとよ役・北林谷栄、孝子の教え子の兄(孝志)役・宇野重吉、姉(咲枝)役・奈良岡朋子など。
 
 新藤監督は広島県出身で、原爆の投下された昭和20年8月は兵庫県の宝塚に海軍二等兵として従軍していました。
 
  新藤兼人監督95歳「言っておきたいことがある」(IT屋もりたの今時パソコン日記)
  ・新藤兼人監督「陸(おか)に上がった軍艦」(IT屋もりたの今時パソコン日記)

 
 「陸に上がった軍艦」の中で新藤監督がおっしゃっていましたが、原爆というのは投下された瞬間にも大量の人を殺しました(広島で約10万人)が、被爆から1時間後、1日後、3日後、10年後、20年後という具合に“じわじわと”後になって効いてくる、いつ発症するかわからない恐ろしい病気といいます。(結果的に原爆による広島の被害者の数は、約20万人に達した。)
 この映画(「原爆の子」)の中でも、被爆の後遺症に苦しむ人々と、家族を失った多くの方々の、被爆から6年後の現実が描かれていました。
 
 
 話はそれますが、この映画を見ている時に、最近活発になっている憲法九条改正論議を思い出しました。それぞれの論拠によって賛否両論があるとは思いますが、当事者の実態とかけ離れたところで議論しているように思います。少なくとも、原爆により亡くなった方とその家族、現在もなお被爆による後遺症に苦しむ方、日本中で行なわれた空爆によって亡くなった方や被災者の苦しみの実態を知ってから議論しなければ、何の意味もないと思います。
 
 
 
 約6時間、新藤ワールドに浸ったためか、翌日は新藤組常連俳優の乙羽信子さん、殿山泰司さんの表情やしぐさが頭にこびりつき、その声や言い回しが耳から離れませんでした。しかし悪い気持ちではありません。
 
 新藤監督の作品で観たのは未だ3つ(「陸に上がった作品」も含めると4つ)ですが、肩肘張らず見ることが出来ました。飾ることなく、対象や現実をありのままに表現しているように思います。だからといって決して面白くないということではありません。
 
 また、「縮図」、「原爆の子」ともに50年以上前の作品ですが、映像(撮り方・構図)や話し方に古さを感じません。上記の簡素でありながら面白みがあるということと併せ、脚本家・新藤兼人がベースにあることによるのではないかと思います。「新藤兼人全監督作品カタログ」によると監督作品46本(「陸に上がった軍艦」を入れると47)に対して、脚本執筆作品は映画だけでも238本とのことです。
 
 「これはいい映画ですよ、ぜひ見てください」と言わんばかりの映画は、制作者側の意気込みが表に出すぎて、かえって観る側の気持ちが引きます。そういう映画にウンザリしている人は、新藤監督の映画を一度観てはいかがでしょうか。
 
 
--- 関連情報 ---
(1) サプライズ2 三越劇場「昭和26年・下宿神田屋」 2007年04月04日 IT屋もりたの今時パソコン日記
(2) 新藤兼人監督95歳「言っておきたいことがある」 2007年08月13日 IT屋もりたの今時パソコン日記
(3) 新藤兼人監督「陸(おか)に上がった軍艦」 2007年08月15日 IT屋もりたの今時パソコン日記

投稿者 もりた : 2007年08月19日 14:40 このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

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