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2007年05月26日

NHKの技術研究成果をもっと国民生活へ活用しよう!-NHK技研公開2007・研究発表より

 NHK技研公開2007・研究発表の聴講報告の続きです。
  日本の地デジ方式(ISDB-T)ブラジルで採用-NHK技研公開2007・研究発表より(IT屋もりたの今時パソコン日記)
 
 上記の特別発表の他に、以下の研究発表がありました。(発表№ タイトル 発表者(所属)の順)
  発表者はいずれも、NHK放送技術研究所の所属。カッコ内は専門。
  下段は、展示会場番号(カッコ内)および発表内容、IT屋もりたのコメント

 
  研究発表1  ワンセグの普及に向けた新技術  岡野 正寛氏(システム)
    (会場番号-7)ワンセグ連結再送信システム、および (会場番号-6)緊急警報放送によるワンセグ端末の自動起動
    IT屋もりたのひと言コメント: ワンセグ機能付き携帯電話・ワンセグ受信機が急激に普及しているが、地下街、ビル陰などでは受信できない。地下街独自のコンテンツを追加できるなど、単なる解決策を超えたユニークな提案である。展示会場では、研究開発にあたられた岡野氏ご本人に質問、ご説明していただいた。
 
  研究発表2  IPネットワークにおける放送型コンテンツ配信サービスのためのセキュリティ技術  藤澤 俊之氏
    (会場番号-25)オープンなIPネットワークを使って、誰でも低コストで、映像の同報配信が可能になった。現行放送局から個人放送局まで入り乱れる中、情報の信憑性と品質を維持するために、セキュリティ技術(脅威と攻撃に対する対策)の開発がカギを握る。
    IT屋もりたのひと言コメント: インターネットとビデオカメラを使って、個人放送局や地域テレビが簡単に始められるようになった。それらの信憑性や品質の維持も、もちろん重要であるが、現行放送局によるIPネットワークの利用(今回発表されたアーカイブス・オンデマンドサービスなど)開始に向けて、非常に重要なテーマである。
 
  研究発表3  超高精細映像システムを用いたインテグラル立体テレビ  洗井 淳氏(人間・情報)
    (会場番号-5)パンフレットでは“未来の立体テレビ”として紹介されている。本研究は、独立行政法人情報通信機構(NICT)の委託研究の一部として、日本ビクター株式会社と共同で実施したもである、とのこと。
    IT屋もりたのひと言コメント: 従来の立体テレビは特殊なメガネを必要としたが、今回のはメガネなしでOK。上記タイトルにある“超高精細映像システム”とは、スーパーハイビジョン技術のことである。今回は、スーパーハイビジョン技術を立体テレビにも応用したことが、一番の工夫である。
 
  研究発表4  視覚障害者向け マルチメディア受信提示システム  半田 拓也氏(人間・情報)
    (会場番号-32)データ放送(放送)とインターネット(通信)、いずれにおいても、従来のテキスト中心の情報から、マルチメディア(テキスト、音声、静止画、動画など複合)コンテンツが増加している。またインターネットで動画(デジタル映像)を見たり、逆にテレビでインターネットを見るケースも増えている。このような状況において、視覚障害者はコンテンツの把握が従来にも増して困難になっているとのこと。ここでは、その解決策として、触覚の併用による情報提示法(出力)、放送(データ放送、EPG)と通信(Web)のフォーマットの統一(共通API)等の研究について、発表された。本研究は、独立行政法人情報通信機構(NICT)の委託研究「視覚障害者向けマルチメディアブラウジング技術の研究開発」の一環として、東京大学と共同で実施したもである、とのこと。
    IT屋もりたのひと言コメント: 放送と通信のフォーマットを統一して、パソコンやその他、ブラウザ搭載機器に提示する、というこの研究成果(共通API等)は、障害者向けはもちろんのこと、広く一般に応用できる技術であると思う。情報をオープンにして、今後は、NHKやNICT、研究に参加している民間企業だけでなく、特に一般消費者が協力して開発できる体制を作ることを、強く推進して欲しい。そのために、(NHKさんは動きにくいと思うので)国(総務省)の強いリーダーシップを望む。
 
  研究発表5  冷陰極HARP撮像板  難波 正和氏(材料・デバイス)
    (会場番号-18)夜間緊急報道など、照明が制約される撮影条件下では、暗いところでも対象が映る、超高感度のカメラが使用されている。従来からの高感度カメラに採用されているHARPHigh-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)撮像管は、約100mmの長さがあり、CCDカメラと比べてかなり大きい。今回は、画素数を従来の6倍に増やした冷陰極アレーを開発したことにより、撮像管の幅を約10mmにまで小さくすることができ、カメラの小型化を実現した。それによって、従来からの夜間緊急放送だけでなく、医療(内視鏡)など様々な分野への利用の可能性が出てきた。本研究は、双葉電子工業株式会社パイオニア株式会社浜松ホトニクス株式会社と共同で進めている、とのことである。
 
  研究発表6  低電圧動作シリコンマイク  井口 義則氏(材料・デバイス)
    (会場番号-34)研究の背景として、あらゆる環境に適応できる高性能マイク(放送用)の実現と、民生(国民生活:注1 本記事の末尾に注釈を掲載しました)への応用を目指した取り組みがあったとのこと。今回の研究成果として、あらゆる環境への適用という点では、料理番組(天ぷらを揚げている油の至近距離での音)や、科学番組(サイエンスZEROにおける化学反応時の音)での利用実績が紹介された。民生用では、車載用マイクへの応用を目指して、電圧(上記の放送用では42Vを実現)をさらに12V(自動車)まで下げるための、工夫などが紹介された。本研究は、松下電器産業株式会社と共同で進めている、とのことである。
    IT屋もりたのひと言コメント: 車載用マイク(民生)実現のために、低電圧化の取組みの説明がおもしろかった。マイクの感度は、動作電圧に比例し、膜厚と空隙長に反比例する、とのこと。感度を下げずに動作電圧を下げるためには、膜厚、または空隙長を小さくする必要がある。空隙長を短くすると、大音量の際、振動膜と背面電極が接触し易く、不安定になってしまう。膜厚を出来るだけ薄くする必要がある。今回様々な試行錯誤の末、振動膜厚の半減に成功し、12V動作マイク(車載用マイク)実用化への見通しがたった、とのこと。
 
 
 以上が、研究発表の概要です。

 
  それぞれの研究発表毎にQ&Aの時間が設けられ、会場からの質問に対して、発表者から答えていただきました。(各発表毎に1~2問ずつ)
 気になったことは、質問者(会場の聴講者)の多くもまた発表者と同じく技術者・研究者であったことです。そのためか、専門的な質問が多く、技術的な興味そのものからの質問が多かったように感じました。新しい技術の研究開発、特に基礎研究においては、技術者の興味・関心が動機(モチベーション)となり、研究を進めるうえでの大きな推進力ではあると思います。しかし、技術者の頭の片隅に、研究成果を利用する人や社会との接点が、常になければ、単なる大人の遊びになってしまいます。いや、遊びどころか、人や社会にとってマイナスの方向への道を後押しすることに、力を貸す危険さえあり得ます。技術者は、常にそのことを忘れずに、仕事に当たることが大切であると考えます。
 そうは言っても、対象への強い関心・興味がなければ、新しい技術、方式などは生まれて来ないことも事実です。従って、技術的関心に劣らない、強い意識を人や社会との接点(利用)に持ち続けること(技術への関心と人や社会への関心の両方を併せ持つこと)が、特に重要であると思います。
 
 
 上記のようにNHK技術研究所では、放送に関して様々な分野、かつ、基礎から応用まで幅広い研究を行なっています。あまりにも広く、膨大すぎて、一般の国民には理解はもとより、なじみが薄いと思われます。しかし、これだけ多くの研究者、研究内容、およびその成果を、もっと多くの国民に知ってもらい、いろいろな意見(フィードバック)を得ることが必要ではないかと思います。
 もちろん、多くの研究を民間企業と共同で実施していることは、上に述べた通りです。また、毎年開催されているこの技研公開そのものが、そのための1つの場であると思います。(2007年5月27日追記) しかし、現状では、研究開発段階における一般消費者との双方向コミュニケーション、研究成果の利用(民間企業により製品・サービス化)、製品・サービスに対する消費者からのフィードバック、いずれも不充分であると思います。
 
 これらについて、NHKだけでなく、行政(総務省)はもちろん、特に国会議員の方に認識していただき、改善していただきたいと思っています。もちろん、その前に新しい技術やサービスに関わっている私ども自身が、この問題の改善策について考えたり、提案していくことが前提として必要であると、認識しています。その一環として、放送や映像、通信、インターネットを含む新しい技術や事柄、出来事等について、ブログを通じてお伝えして参りました。引き続き、技術が専門ではない一般の消費者の方も意識した記事の投稿を、心がけて参ります。(2007年5月27日追記)
 
 
 (注1) “民生”あるいは“民生用”という言葉の解説
  元々は、軍事目的や公的機関(国、地方政府など)向け、事業(業務)用に開発・利用された技術・製品を、一般の消費者など国民生活のために転用することを、“民生”あるいは“民生用”と呼びます。技術者や研究者がよく使う、一種の専門用語のようなものです。私自身、およそ27年前に初めてこの言葉を聞いた時、違和感を憶えた記憶があります。かろうじて、意味はすぐわかりましたが。技術者や研究者の間で会話する時と、一般の方が同席する場で話す時に、言葉の切り替えが出来ることも、技術者・研究者に求められる重要な資質であると考えます。(2007年5月27日追記)

 
 
参考文献
 
 平成19年度技研公開 講演・研究発表 予稿集(平成19年5月24日 編集:NHK放送技術研究所)
 
 
 なお、下記の記事も併せてお読みください。
  「アーカイブス・オンデマンドサービス」が目玉!NHK技研公開2007(IT屋もりたの今時パソコン日記)
  ・日本の地デジ方式(ISDB-T)ブラジルで採用-NHK技研公開2007・研究発表より(IT屋もりたの今時パソコン日記)

 
--- 関連情報 ---
(1) 「アーカイブス・オンデマンドサービス」が目玉!NHK技研公開2007 2007年05月25日 IT屋もりたの今時パソコン日記
(2) 日本の地デジ方式(ISDB-T)ブラジルで採用-NHK技研公開2007・研究発表より 2007年05月26日 IT屋もりたの今時パソコン日記

投稿者 もりた : 2007年05月26日 22:19 このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ!

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